調達魂

~日々奮闘する資材調達・購買バイヤーに贈る言葉~

ソフトウェア開発や建築工事案件の見積評価、工数単価の確認を

工数単価は人工費用とも言い、メーカー様の社員1人の1日当たりの人件費のことです。

以前別の稿で装置の見積評価をする場合のことを書きましたが、こうした工数単価を基に見積評価をするのはソフトウェア開発や建築工事案件でも良く見られますね。

tyoutatsumeister.hatenablog.com

一方、こうした案件でも明細がなく「〇百万円/一式」と1行しかない見積書も良く見かけます。

これは、取引先様から「工数単価×時間=合計金額を基に値切られるのは納得できない。あくまで成果物で評価をしてほしい。」という思いによることは理解できます。

しかし、私は常に、取引先様は誠実な金額を提示している、と性善説で考えてますので、
調達担当者として提示金額は誠実なものであることを理解したい。
と説明して、工数単価の提示を求めます。

ソフトウェア開発の場合

特にソフトウェアの業界では「単価×工数の計算・評価という悪弊からの脱却」を標榜されている話も聞きますが、この「単価×工数」による見積提出依頼は、私たち調達部門が折衝で優位に立つために作ったルール・土俵ではないかと思っています。

しかし、これは私たち発注者側が一方的に有利になることではなく、受注したい取引先様の側でも上述したように見積金額の透明性・妥当性及び値引金額の提示による受注意欲を数値で現した書類であると思っています。

一般的に工数単価の提示は職位によって
プロジェクトマネージャー(PM)、システムエンジニア(SE)、プログラマー(PG)
の3つがあります。

その中でもプロジェクトマネージャーの単価は高いのですが、その上で会社によって人によって大きな差があり、
「あの会社の〇〇さんは月3百万円なのに別の会社の〇〇さんは月5百万円する。」
などと言うことは良くあります。

発注先の選定で工数単価の安い方にした場合は良いですが、総合評価の結果により高い方を選定した場合でも価格折衝の席上で
「貴社は他社に比べ工数単価が高いので相当の価格見直しを」
とは安易に申し入れできませんね。

これに対しては
「成果物には自信がありますので、内容を見てご評価をお願いします。」
などと言われるのがオチです。

私はこの時点ではあまり深追いはせず、その案件の成果に対する評価を次回の価格折衝時にキチンと反映させるようにします。

ただし、成果物の評価が低い場合は「この次」はないことも多いですね。

建築工事案件の場合

一般的には人工単価は提示されず、
「施工費〇〇¥+材料費〇〇¥」とか例えば「1階空調ダクト保温工事(材工共)〇〇¥」などを見積表記では良く見かけます。

これに対しては「この部分の作業員は延べ何人で計画されてますか?」と問合せますが、項目が多いと煩雑になり取引先様の負担になります。

そこで、私は社内の担当者が工事内容を検討するために取引先様から入手した作業日程表に作業人員計画を盛り込んだ資料をもらうようにしています。

以前、ある設備の除却に伴う解体工事の見積評価をした時に、この人員計画表を基に見積評価をしたところ、見積では各ユニット毎の解体費用を積算して合計金額を出しているのですが、計画人員×人工費用で計算したところ大幅に安価な評価金額となり、実際の価格折衝でも▲50%近い金額で決着することができました。

いつも空調配管の工事をお願いしている取引先様からは
「例えば250Φで10mの配管を@単価×mで見積評価されても直線配管できる場合と梁などで迂回が多い場合では手間・時間が全然違う」という話を聞きます。

ですから
やり易い仕事=作業人員工数が少ない
やり難い仕事=作業人員工数が多い
という当たり前のことになります。

 

ところで、建築工事案件の見積評価では作業員の方々の人工単価は安いですね。その評価単価がその通りでなくても私たちは仕事とは言え、そこから更に価格折衝をする訳です。

作業員の方々はゼネコン・サブコンからすると下請け・孫請けとなり、その実際の支払いを私たちからコントロールすることはできませんが、もう少し手厚くすることはできないだろうか、なんて思ってしまいます。

でも、それこそ無責任な話ですね。

 

調達の業務課題には様々な対応があり、何が正解ということはありません。

その中で、このブログが対応策の検討やセカンドオピニオンとして少しでもお役に立てれば幸いです。

また、営業職の方々にとっても調達担当者の考え方を理解することで取引先との良好な関係を築くための参考となれば幸いです。