調達魂

~日々奮闘する資材調達・購買バイヤーに贈る言葉~

取引先の商社は価値のある仕事をしていますか?

調達業務では、メーカー様と直接の取引もありますが、商社様を通じて購入している材料や装置も多数あると思います。

それらの商社様はメーカーからの仕入れ金額に自社のマージンを上乗せした金額で私たちの会社から受注していますが、マージン分の仕事をしているでしょうか?

材料の場合、モノのデリバリーは私たちから見えてない部分でなかなか大変なことがあるかもしれませんが、もし伝票を通してるだけなら早く直接取引に切り替えたいですね。

「伝票を通してるだけ」という場合は、漏れなく何らかのシガラミがあると思いますが、何らかの機会に思い切って商流の変更を打ち出しましょう。
「コロナ禍がキッカケで業務をゼロベースで見直す方針が出たので」という理由でも十分かもしれません。

商社経由の取引からメーカー直接取引に変更するには

発注品の納期管理も不十分で、私たちの会社の状況もメーカー様にキチンと説明できていないような窓口商社の場合は、担当者に「貴社はマージンを取るような仕事はできていない」と言うと「そんなことはありません」とか「今後は、より一層がんばります」とかのコメントをくれます。

その後、何か問題が発生する都度こちらから同じことを繰り返し発言し、上長同席の面談などでもメーカー様と直接取引したい意向を匂わせておきます

何しろ、発注品の納期フォローや、私たちの会社の状況をメーカー様にキチンと説明する仕事は私たち調達部門が十分できるので、窓口商社など不要なのです。

一方、並行して商流についてメーカー様の意向を確認しておく必要があります。

私たちの会社から見ると、メーカー様との取引は窓口商社を通じた一本の線に見えます。

しかし、メーカー様は広い市場という海原に商社のネットワークという網を打っており、そのため対象の商社様の存在が大きく、私たちの会社1社の要望を聞くことは厳しいかもしれません。

ただ、こうした場合でも私たちが「この商社は不要」と判断したくらいですから、時代の流れの中で過去は存在感があっても、現在は見直す必要を感じている可能性は十分あると思います。

商流変更は慎重に外堀を埋めてからメーカーと直接取引することを宣言し、実行します。

このように、昔ながらのビジネススタイルのままの商社は、私たちから見ると現在は大量生産品の小口配送くらいしかマージンの源泉はないように思えます。

ですから、そうならないために様々な努力や工夫をされている訳です。
私が、以前から読んでいるコラムの中で

小山昇氏の「こころ豊かで安全な経営とは何か」
https://business.nikkei.com/atcl/opinion/16/122700035/

この中には、同じメーカーの製品を売るために他社とどう差別化を図りお客様から選んでいただくか、が豊富な事例と共に書かれています。

例えば、よくあるPRで
「困った時には何でもご相談ください。必ずお役に立ちます」
と言うような特色も工夫もない商社様には用はありません。

これに対し、価値あるサービスの提供が期待できる商社様なら
「〇〇のことなら国内外で経験・実績が豊富ですので、一度投げ掛けてみてください」
このように特長を具体的に示されれば、こちらもメモしておくのですが・・

装置メーカーの代理店はもっと存在感が薄い時代に

広義で機械商社の場合、昔はカタログをカバンいっぱい詰めて「この機械はどうですか?この装置はどうですか?」と言ってお客様を訪問していました。

しかし、今はネットの時代です。
カタログならダウンロードできますし、問合せならメーカーのホームページを通じて直接コンタクトできます。

確かに、ある目的で装置を導入する場合、複数のメーカーを検討するのに商社の担当者が比較表を作成してサポートしてくれることがあります。

これはマージンを取るなら当然のサービスではありますが、私は自社の担当者に対して、それくらい自分で直接メーカーから情報を取ってまとめるべき、と思っており、そのように指導もしています。

会社には毎日ひたすらルーチンワークしかさせてもらえない方もいる中、新規の設備投資の検討を任されたのですから、このチャンスはしっかり自己の経験にしてほしいのです。

中小の装置メーカー様の場合は少なくとも受注した装置が完成し検収が完了しないとお金が入って来ませんので、こうした機械系の商社様に与信管理的な役割が期待できますが、大手装置メーカー様の場合はもう商社が間に入る理由が私にはよくわかりません。

ですから、どちらの機械系商社様のトップも懸命に自社の価値をどこに求めるか模索されているようです。

私からは、ただ一つ
R&D用の理化学機器は一般的に単能機です。個々の企業の開発テーマはこうした既存の評価・分析機器を使用しますが、開発テーマによって評価項目の組み合せが異なります。

その中で、複合した評価・分析を独自に行いたいというニーズは確実にあり、これはオーダーメイド的なものです。

そこで、商社様は個々の評価機器を自社のネットワークを活用しインテグレートすることで複合した分析・評価ができるシステムを構築するという役割を果たすことができます。

R&D部門には生産技術面のバックアップが薄い場合があり、逆にこの面であれば商社様の力量を発揮していただく余地が十分あると思っています。

ただし、従来の単品商売は「売っておしまい、メンテはメーカー任せ」だったのに対し、こうしたインテグレートの受注では総合保証が当然求められ、リスクが大きくなります。

しかし、商社様との関係であれば、この方が断然面白い。

何しろ、こうした受注であればメーカー様に対する帳合先など関係なく、商社様の提供した価値を十分主張できるのですから。

もちろん、調達担当者として冷徹に見積評価を行った上で、価格折衝の席上では精一杯の価格協力を依頼しますが、折り合える着地点が全く違ったものになるでしょう。

tyoutatsumeister.hatenablog.com

 

調達の業務課題には様々な対応があり、何が正解ということはありません。

その中で、このブログが対応策の検討やセカンドオピニオンとして少しでもお役に立てれば幸いです。

また、営業職の方々にとっても調達担当者の考え方を理解することで取引先との良好な関係を築くための参考となれば幸いです。