調達魂

~日々奮闘する資材調達・購買バイヤーに贈る言葉~

納期トラブル、取引先様の回答納期を鵜吞みにするのはキケン

納期トラブルが発生する原因は、自社の製品が突然追加受注した場合のようなハッピーパターンや、突発的な品質トラブルの発生による緊急の代替品の生産とか自社や取引先様の関係者のヌケ・モレ・勘違いによるものなど様々ですね。

しかし、どんな原因にせよ私たちは企業としてお客様から受注した製品を納期通りに納品する責任を負っており、この責任を常に果たすことがお客様から自社に対する取引信頼性の基本の一つとなります。

 まず「納期通りの納品」に全力を尽くす

長年に亘り常に納期通り納品する、ことは受け手の私たちに当たり前のことに見えても、個々の製品のメーカー様や商社様にとっては、一般的に年に1度や2度は危ないことがあるようです。

しかし、取引先様は私たちに対して「納期については何も問題はありません」と涼しい顔をして相対するのが一つの美学のようです。

私は営業職だった時代に、デリバリー業務の中でこうした危ないことを何度も経験していますので「品質・納期で何の問題も発生させない」ことを継続する裏側では大変な努力をされているはずだ、と思っています。

ですから日頃の「いつもお世話になっております」という挨拶は、面談でもメールでも、型通りの挨拶などではなく、いつも心からのお礼として申し上げています。

 

という訳で、自社からお客様に「納期が遅れます」という連絡を差し上げることになるのは相当なことです。

しかし、努力はしても最終的に納期が守れない時に、その悪いニュースをお客様に伝えるのが受注納期直前であれば、そのお客様がその先のお客様への対応する時間が大きく制約されてしまい、より問題が大きく・広くなってしまいます。

そこで、何らかの「危ない事態」で納期が守れないリスクが発生した場合には、そうした状況を製造部門に情報提供します。

製造現場はそんなにヤワではありませんので、このような状況の場合はたいがい製品在庫や材料在庫を持っているため、例えば「余裕はあまりないけど、来週月曜の昼には必要」なとのコメントをくれますので、これを取引先様に伝え、その後状況をフォローします。

次回ロットの納入日はいつ?

大問題となるパターンの一つとして突発的な品質トラブルでロットアウトが発生した場合がありますが、未経験のモードでの品質トラブルを想定すると話がややこしいので、ここでは取引先様の製造装置のトラブルに起因して発生した問題と仮定します。

まず、製造部門に「この材料が遅れそうですが、大丈夫ですか?」と投げ掛けたところ、「その材料ならしばらく大丈夫」という回答を得た、なんてことでは全くダメですよね。

製造部門への連絡には必ず「〇〇が原因で、納期が遅れて〇月〇日になりそうだ」という情報が必要ですが、この時に取引先様からの連絡をそのまま鵜呑みにして納期を社内連絡してしまうのは大変危険です。

連絡を受けた社内では、この納期を前提にしてお客様へ製品の納期回答をします。

ところが、取引先様からの提示納期が「装置の交換部品の納期が通常5~10日かかるが、うまくいけば3日なので」とか「使用する材料が全て材料メーカーに在庫があれば」とか、その時点で根拠のない希望的観測に基いたものであったとしたらどうでしょうか?

怖ろしいですね。

納期遅れを引き起こした上に、遅延した納期も守れなかった場合、社内での私自身や取引先様に対する信頼を裏切るだけなら「身から出た錆」ですが、それが原因してお客様から自社への信頼を大きく損なってしまったら大変な損失です。

こうした場合、納期遅延の連絡時に提示した納期を最低限守り、その上で1日でも2日でも前倒し納品されれば信頼性へのダメージはそこまでで食い止められる、と私自身は考えています。

 ですから、その時点では希望的な観測はできるだけ排除して現実的な納期はいつなのかの情報をヒヤリングし、例えその納期見通しが、必要納期との乖離が非常に大きく、非現実的に見えても、それが現実である、と考えて社内には情報連絡します。

こうして希望的観測を除外し、積み上げた事実で取引先様と検討・協議することで良くも悪くも納期の着地点が見えてきます。

実際には、ここまで来るとその納期を前提として対象品の生産日程なども組まれるため「これ以上少しでも早く」ということは少なく「今の納期は絶対に守ってほしい」という状況になることが多いですね。

 

しかし、調達実務をしていると、年間通じて品質・納期に安定して対応をいただいている取引先様とは、何も問題が発生しないため面談の頻度・密度が低く・浅くなってしまい、3か月~6か月に一度くらいの頻度で何らかの問題を引き起こす取引先様との面談の方が頻度・密度が高く・深くなってしまうことにはいつも「なんだかなぁ」と思ってます。

 

調達の業務課題には様々な対応があり、何が正解ということはありません。

その中で、このブログが対応策の検討やセカンドオピニオンとして少しでもお役に立てれば幸いです。

また、営業職の方々にとっても調達担当者の考え方を理解することで取引先との良好な関係を築くための参考となれば幸いです。