調達魂

~日々奮闘する資材調達・購買バイヤーに贈る言葉~

「業務委託契約」の支払い、検収基準は2通りある

成果物の内容についての可否判断を経て検収する

この考え方だけが業務委託契約締結時の検収基準であると信じており、これまで関与した契約案件には全てこの条件を盛り込んでいました。

ところが、ある時海外の大手コンサルティング企業の日本法人との契約締結に当たって、成果物の内容について可否判断をした上で支払うという条件を提示したところ、相手先様から本件業務は準委任契約とする支払条件でお願いしたい、との申し入れがありました。

この時は実のところ「準委任契約」という文言を知らず???であったため、調べてみたところ、まだまだ自分は無知であることを痛感することとなりました。

民法に「業務委託契約」という文言はない

日頃の事業活動では、コンサルティングや市場調査とかIT関係の保守や工場の構内清掃業務など様々な「業務委託契約」を締結しています。

ところが調べてみると民法上「業務委託」というものはなく、その目的や契約内容から「委任契約」と「請負契約」のどちらかに分類されるようです。

「請負契約」なら

建築案件で日頃経験しているように

例えば
 取引先様:「ご注文の建物が完成しました。契約仕様通りかを確認してください。」
 当社  :「この部分が契約仕様を満たしていないので手直しをお願いします。」

 そして取引先様が指摘部分を手直し工事を実施した結果、翌月になって

 取引先様:「先月にご指摘部分の手直しが完了しましたので確認してください。」
 当社  :「これで全てOKです。今月の検収として計上処理をします。」
という感じですね。

「委任契約」と「準委任契約」

 調べてみると「委任契約」は民法に規定されている法律行為に関する事務を相手に依頼する契約で、例えば弁護士に訴訟代理を依頼するケースがこれに当たり、「準委任契約」は法律行為以外の事務を依頼することで、例えば医師に対する診療報酬などがこれに当たるとのことです。

なるほど・・・

成果に対して対価を支払う、ということであれば、訴訟に負けてしまった場合の弁護士や病気が完全に治る前の医師に対して報酬を支払う必要はありませんものね。
つまり、成果の価値にかかわらず、対応した業務に対価を支払うということでしょうか。

そこで
この考え方をIT関係の保守業務や工場の場内清掃業務などに適用し、「月末締め検収」という契約条件でも月末を待つことなく、社内の検収計上処理をすることとしました。
もちろん、委託業務に関する成果・品質についてはキチンと評価は加えますが、当月費用の検収計上にいちいち可否判断せず評価の反映は翌月とか翌期にする、ということです。

尚、冒頭のコンサルティング企業との契約上の支払条件について、改めて成果物の内容について可否判断した上での支払いとしたいと要望しましたが、相手先様からは準委任契約の条件でなければ契約できない、との回答でした。
これに対し、自社内から今回は是非この企業と契約したい、という強い要望であったため相手先様要望の条件での契約締結となりました。

 

調達の業務課題には様々な対応があり、何が正解ということはありません。

その中で、このブログが対応策の検討やセカンドオピニオンとして少しでもお役に立てれば幸いです。

また、営業職の方々にとっても調達担当者の考え方を理解することで取引先との良好な関係を築くための参考となれば幸いです。