原油やナフサの価格上昇による値上げ打ち出しへの一つの対応
取引先様から値上げの打ち出しを受ける場合に良くある理由として原油やナフサの価格が上昇し、このコストupを内部で吸収しきれないため「やむを得ず」価格改定をお願いする、という言い方が多いと思います。
そして、こうした場合に取引先様からのお願い書面と一緒に提示される資料として
〇直近3カ月のナフサ価格の推移 ※これは一般的な模式図です。
こんなグラフの資料を提示されることが多いですね。
そして例えば
「現状では+10%くらいの値上げをお願いしたいところですが、できるだけ社内努力で吸収して、貴社には+5%の値上げを何とかお願いしたいのです。」
というような説明がなされますね。
一般にこうした場合の値上げの打ち出し価格は
ところで、この「打ち出し価格」という表現は原油にまつわる価格の話をする時の独特の表現でしょうか?ほかでは聞いたことがありませんが知っているととても便利です。
もう一つ、この打ち出し価格に対し「高い!」などと言うと「それでは貴社のお見立てはどれくらいでしょうか?」などという会話となってきます。
この「打ち出し」と「見立て」という言葉は商談に臨む上でのボキャブラリーに加えるととても便利です。
で、一般にこうした場合の値上げの打ち出し価格は、原油やナフサの価格が対象品の製造原価に対する比率はそれほど大きくありませんので、+20%とか+30%とかの大幅な値上げ打ち出しであることはあまりありません。
しかし、対象材料の原価構成の情報を得る貴重な機会ですので、その目的を頭に刻み良くヒヤリングします。
原油・ナフサの価格と購入単価の推移を長~い期間で確認する
先に「+5%値上げの打ち出し」と記述しましたが、取引先様は「弊社の打ち出し価格は5%upです。」とは言いません。
なぜなら「打ち出し」とは、そこを起点として両社で折り合える価格を協議する、というニュアンスですので、それでは最初からその価格では無理と認めることになりますから、あくまで私たち調達側での言い方になります。
という訳で、私たち調達は取引様の打ち出し価格をそのまま承諾できませんので、普通は値上げの「阻止」「延期」「値上げ幅の圧縮」という3段階で抵抗します。
しかし、3段階といっても実際は「弊社も同様に厳しいので、そこを何とか少しでも」とか、競合購買している取引先様を活用した牽制などを駆使する感じですね。
こうした中で、私は以前下のような資料を作成しました。
〇3年分のナフサ価格と購入価格の推移 ※これも一般的な模式図です。
いかがでしょうか?
単純に購入単価の改定履歴とナフサ価格の変動を一つの図にまとめたものものです。
約2年半くらい前にナフサ価格の上昇により購入単価upの対応をしていますが、その後ナフサ価格が下落したにもかかわらず、私たち自身のチェック漏れ(業務怠慢?)により価格見直しをしていなかったことがわかります。
一方、今回の取引先様の値上げ打ち出しに対しては上記資料「B」部分のナフサ価格下落時に取引先様は相応の利益を享受したように見えます。
とにかく、取引先様が自分たちに都合の良い期間の資料にもとずく説明をするなら、私たちも期間を3年でも5年でも10年でもこちらに都合の良い期間での資料を作成して対抗するのです。
実際、この時私は取引先様にに対して
「現状のナフサ価格の上昇傾向は明日以降どうなるか不明で下落に転じる可能性もある。一方、実績として現在の購入単価の値上げに応じた時点のナフサ価格を下回る期間が長期に及んでいるため、むしろこれを遡及して値下げ対応の依頼をしたいくらいだ。
しかし、それが難しいなら、せめて現状の高水準のナフサ価格が現在の購入単価の水準を下回った期間に見合う期間が経過するまで価格改定の協議には応じられない。」
とコメントしたところ、それ以降は値上げについて何の話もありませんでした。
それでも「値上げ」を言い値で承諾した時
このように調達担当者として購入単価の値上げには激しく抵抗し、時には逆に「金返せ」と言うことがあるくらい、ああ言えばこう言う、の世界です。
しかし、そうした中で印象に残っているのは「ダンボールの値上げ」の対応です。
ダンボールの値上げの打ち出しは決まって「全国段ボール工業組合連合会」の名前で
「ダンボール業界の事業環境は一段と厳しさを増している状況の中で一律+〇%の値上げをお願いする次第です。」
という業界が結束して値上げを打ち出すパターンです。
これに対し私たち調達担当者は、複数購買している他のダンボールメーカー様の製品との切替え採用(シェア操作)などを通じて結局値上げの打ち出しをいつもウヤムヤにしてしまいます。
ところが、ある日
「ダンボールの主材料である古紙が中国での旺盛な需要を背景に高値での買取攻勢を受けており、国内のお客様に製品提供するには、この中国に買い負けない価格で対抗するしかないので値上げを認めてください」
という申し入れを受けました。
これまでは国内の同業他社との牽制を演出して値上げの打ち出しをかわしてきましたが、この背景・理由に対しては小手先の策を弄することは止め「買い負けない」体制のため、打ち出し金額にて承諾をしました。
この判断が正解であったかは良くわかりませんが、従来の枠組みに当てはまらない背景・状況に対して不用意に従来と同様の対応をしてしまうと取返しのつかない事態を引き起こしてしまうかもしれませんね。
お~コワ~。
だけど、それだから毎日の緊張感があって良いのかも。