調達魂

~日々奮闘する資材調達・購買バイヤーに贈る言葉~

品質トラブル発生! まず何をする?

テレビドラマなら

調達担当者が問題を起こした材料メーカーの営業担当者に対し「とにかく、スグ来い!」と電話をするシーンが思い浮かびます。

私の周りでも他部署から配置転換で調達業務を開始した新人が、偉そうに「スグ来い」という電話をしているのを見かけたことがあります。

取引先様に対して「スグ来い」というのは、一見すると問題に対して即応しているように見えます。
しかし、問題への実際の対応は対象材料メーカーの営業担当者が来訪してからスタート、ということとなり、これでは遅くて話になりません

実務では

例えば液晶材料の業界では、パネルメーカー様から不具合の指摘を受けた場合、24時間以内に第一報し、72時間以内に最終報告をすることが求められます。

そこで、写真や資料を電子メールで送信できる今の時代では、まず取引先様に何があったか、対象Lot、どんな対応を求めるのか、などの情報を電子メールで第一報します。

この電子メールでは同時に、製造・品質保証と協議した上で、これに対する1次回答を、例えば2時間後に依頼し、併せて取引先様にTELで説明・フォローをします。

冒頭の例では、取引先様を呼びつけることを前提にしていますが、何様かと思いますね。
発生した不具合に対する最終的な目標は、再発させないことです。

発生した不具合に取引先様全社を挙げた対応を要請したいのに、肝心の営業担当者が呼びつけられたお陰で新幹線に乗っていて連絡が十分取れない、など笑い話にもなりません。

逆に、提供した資料・情報で取引先様の理解が十分得られない場合は、自社の製造・品質保証担当者と取引先様に乗り込み、製造現場の方々への直接説明も視野に入れます。

こうして自社のお客様にキチンとした製品を安定して供給できるよう、迅速に原因究明と対策を講じることが第一の目標となります。

不具合現品の処理は原因究明と対策が完了した後で

こうした一連の動きの中で、取引先様から対象Lotは仕様を満たしていたとか新規の不具合モードであるとか、原因の特定と対策の確立前からお金にかかわる責任の所在について議論をしようとする動きが出ます。

しかし、私の経験では、この時点で責任の所在についての議論は時間の無駄です。

 まずは原因究明と対策の立案・検証に全力を傾け、対策の検証まで完了すると、そこで初めて何が問題であったのかが明確にわかります。

判明した原因は、未経験の原因であることもありますが、取引先様の製造工程の中で当然するべき段取り変更時の清掃の漏れや、使用する材料に元々問題があったのに検出できなかった、などモノ作りをする上での基本にかかわるミスも少なくありません。

受注する取引先様もモノ作りをするメーカーとしてのプライドを持っています。
ですから、こうしたモノ作りの基本にかかわることが原因である場合は取引先様が私たちに対して費用請求することはありませんね。

不具合現品の返品処理(場合によって更に損害賠償)は、判明した原因を元に協議をして行くこととなります。

不具合発生時の最後の挨拶は「ありがとうございました」ではなく

取引先様との最初の挨拶は、直接面談の場合でもメールの場合でも一般的に「お世話になっております。」であり、無難ですね。

一方、最後の挨拶はどうでしょうか?

普段なら「ありがとうございました。今後もよろしくお願いします。」と言います。
しかし、不具合が発生し迷惑をかけられている状況では「ありがとうございました。」とお礼など言いたくはありませんよね。

では、どんな言葉を使いましょうか・・・

一般的には原因の究明及びその対策検討の時期であれば、面談でもメールでも結びの言葉としては「ご対応、よろしくお願いします」で良いでしょう。

しかし、対象不具合の対応が結果はどうあれ決着した時の面談ではどうでしょうか?
普通なら「では、今後のご対応よろしくお願いいたします。」という感じでしょうか。

 

私は、このような場合は「ご苦労様でした。」という言葉を使うようにしています。

 

学生時代のお正月に神奈川の箱根神社でお守りを売るアルバイトをしたことがあります。

この時に神主さんからお守りを買っていただいた参拝者へは「ありがとうございます。」でなく「ご苦労様でした。」と申し上げるよう指導されました。

つまり、神様はお守りを買ってくれた方々に対し頭を下げてお礼を言う立場ではないという訳です。

この経験から、私は頭を下げてお礼を言うスジではないが、労をねぎらう必要がある場合には「ご苦労様でした。」という言葉を使うようにしています。

「はい、ご苦労様でした。」

おっと、慇懃無礼とはこんな感じなのかもしれません。気を付けないと・・・

 

調達の業務課題には様々な対応があり、何が正解ということはありません。

その中で、このブログが対応策の検討やセカンドオピニオンとして少しでもお役に立てれば幸いです。

また、営業職の方々にとっても調達担当者の考え方を理解することで取引先との良好な関係を築くための参考となれば幸いです。