調達魂

~日々奮闘する資材調達・購買バイヤーに贈る言葉~

品質打合せには積極的に参加しましょう

自動車業界や製薬業界などでは独自の品質マネジメントシステムがあるようですが、それ以外の業界での世界的なシステムとして「I SO9000シリーズ」がありますね。

これは英国人が
「我が社にはお客様に常に安定した品質の製品をお届けする体制ができている」
ことを世界中に説明することを目的に2000年当時に制定されたようです。

「品質の日本」というブランドに対抗するために規格を制定し、それを世界標準に仕立ててしまう、というのは凄いですね。

それはともかく、日本では企業規模にかかわらず多くの企業で「I SO9000シリーズ」の認証を取得しており、私たちの会社も認証を継続しています。

と言っても調達業務を開始した最初は、品質マネジメントシステム、であることは知ってはいてもその具体的な中身は全く知りませんでした。
そこで、品質保証部門に常備されている基準書・手順書を調達に関わる部分を中心に読んだのですが、やはりチンプンカンプンでしたね。

材料起因の品質に関するトラブル対応や改善活動に巻き込まれる

チンプンカンプンの私に対して品質保証部門から「4M変更申請書の提出を取引先様に依頼して」とか「この品質対策書では全く納得できないから出し直しを」とか「今度、訪問品質監査するから段取りよろしく」とか次々に依頼されました。

特に、主要材料でありながらお客様(=市場)の要求品質が上昇している中でそれに追いつけていない材料の取引先様数社とは月に一度「定例品質打合せ」を開催しており、その主催を申し付けられていました。

この「定例品質打合せ」で当初できたのは、社内外の日程調整と打合せ議事録の作成くらいでしたが、今思うと議事録の作成はとても勉強になりました。

議事録を作成するという目的でメモを録っていると、よく議論があっちこっちに飛んで、訳がわからなくなります。
そうした場合は「さっきは〇〇の議論をしてましたが、それってどうなりましたっけ」とあっけらかんと質問してみます。
これに対し「おお、そうだな」と言って元の議論に戻る場合もありますが「それは〇〇ということになった」という説明があると私は調達担当者ですから同席の取引先様に「その理解でOKですか?」と必ず確認をします。

更に、こうした議論では常に5W1Hを両社で明確にするようにしています。

例えば
「改善品のサンプルを〇月〇日に届くようにします」
「ご要望に対する回答は〇月〇日までにメールします」
などという場合は必ず、誰から誰あてかを明確にする、という感じです。

とにかく議事録を作成する上で「あれ?」と思うことは全て確認するようにしています。
私は「暗黙の了解」とか「あうんの呼吸」ということは一切信じてませんので、人を誹謗中傷すること以外は全て言葉に出して確認します。

何しろ、調達部門は自社の取引先様に対する第一窓口として、議事の内容を誤解なく理解して、その後の対応を推進・フォローする責任があるのですから。

業務時間の大半が品質関連業務に

こうして品質保証部門からの次々の依頼や、突発的に発生する品質トラブルの対応に追われる毎日となりました。

これでは調達の本来業務に振り向ける時間が取れません。

ん?

調達の本来業務?

確かに品質関連業務に追われる毎日かもしれませんが、こうした対応を通じて

  • 品質保証部門はお客様から何を要求され、どう対応しようとしているのか。
  • 製造部門はモノ作りをどのように考え、取り組んでいるのか。
  • 取引先様もモノ作りをどのように考え、取り組んでいるのか。

いつの間にか、こうしたことが当たり前のように理解できていました。

ここまで来ると、社内の他部門と協調してできることが拡大します。

例えば

  • 取引先様と価格折衝も含めた幹部面談で、より地に足のついた話ができる。
  • 特定の取引先様が自社の取引先としてふさわしいかどうか社内議論できる。

こうしたことに自信を持って取り組むことができるようになります。

「ISO9000シリーズ」の基準・手順は企業によって様々

一方、こうした品質関連業務の中で品質問題を継続して起こした取引先様に対し訪問品質監査を行うことがあります。

これを受け入れる取引先様の対応も様々です。

一般に、こうした監査は取引先様の「懐を探られる」ことですので歓迎はされませんが、中には、暴走しがちな製造部門に何らかの歯止めをかけたい品質保証部門から「黒船」的な役割を期待される場合もあります。

 それはともかく、訪問監査で取引先様の基準書・手順書を読ませていただくと、自社の内容と大きく異なることに驚きます。

そうした場合は、認証機関から認証されている訳ですから「おかしい」とは当然言わずに「弊社はこの部分はこうなのですが」と説明し、どのような考え方からそのような基準・手順となったかを理解するようにします。

つまり、これも取引先様理解の一環なのです。
いや~、勉強 勉強

 

調達の業務課題には様々な対応があり、何が正解ということはありません。

その中で、このブログが対応策の検討やセカンドオピニオンとして少しでもお役に立てれば幸いです。

また、営業職の方々にとっても調達担当者の考え方を理解することで取引先との良好な関係を築くための参考となれば幸いです。