調達魂

~日々奮闘する資材調達・購買バイヤーに贈る言葉~

在庫を減らすための最も効果的な方法

BtoCの商売と違って、BtoBの商売は基本的には受注生産ですから、在庫を持つ必要はないのかもしれません。

しかし、世の中には手配納期が3カ月とか、場合によっては6カ月を要するものがあり、こうした材料を使用した製品でもお客様からの注文にできるだけ短納期で対応するために自社で在庫したり、メーカー様や窓口商社様に「内示手配」をするなどの工夫をします。

この中で「内示手配」は私たちの会社で引取り責任を負いますが、逆に自社の専用在庫となってしまいます。
しかし、一般に上市している製品には私たちの会社だけでなく多数のお客様があります。

そこで、メーカー様や商社様はこうした需要に対応するため自腹で在庫を持ちます。

在庫は注文の増加に備えてより多く持ちたい

私たちの会社では、手配納期が1カ月の材料であれば、注文の増加リスクに備えて在庫は2カ月分持つことを目安にしています。
つまり、前月の私たちの会社からの発注実績量を踏まえてメーカー様には当月の生産量を決定してもらいますが、常に2か月分の在庫は確保している状態です。

リーマンショックの時にはこの「在庫〇カ月分」というのがいかに怪しげなものかということをつくづく感じましたが、それはまた別の稿で。

ある時、そんな感じの材料の取引をしているメーカー様の営業部長格の方が若い担当者を連れて来訪され
「当社の製造部門から在庫を少しでも圧縮するために注文の精度をもっと上げてほしい、という要請がありまして・・・」
と話を切り出され
「営業は注文が増加した時のために、在庫は大目に大目に、と言うけれど、現場はコスト削減を必死に取り組んでいるのだからここは営業も協力してほしい、と言われれまして」
と言うことでした。

どう思いますか?

確かに、私たちもコスト削減には必死で取り組んでいます。

「違うでしょう!在庫増大の原因は製造部門でしょう!」というのが私の意見です。

在庫増大の原因は「生産頻度」にある

その時は、部下の居る前で部長の立場を損ねるような事を言ってしまいそうでしたので、若手の担当者に向き直って次のように話をしました。

 例えば、ダンボールメーカーでは、およそ60%が翌日納期ということです。

この場合、製品を生産するための材料や仕掛品は相当量あるかもしれませんが、完成品の在庫はほぼゼロでしょう。

「製品が違う」と言われそうですが、私はこれはこれでいわゆるエクセレントカンパニーの姿の一つだと考えています。

つまり、今日の受注に対し今日または明日作って明日出荷すれば在庫はゼロになります。

確かに、そこまで極端なことはできないかもしれませんが、現状は月に1度の生産頻度の製品だから在庫を2か月分持っているのです。

そこで仮に、月に2度、2週間に1度の生産頻度であれば、需要の振れ幅は短期であればより小さくなるので在庫は半分以下で十分になると思われます。
では、月に3度の生産頻度なら・・

製造現場の生産効率を最も阻害するのは生産品種変更に伴う「段取り替え」でしょう。

ですから、生産効率を追うと1回の段取り替えでできるだけ大量に生産しようとします。その結果、特定の製品の生産頻度が1カ月に1度、中には3カ月や6カ月に一度というものも出てきます。

製造現場のジレンマですね。

しかし、お客様である私たちはハッキリ「生産頻度を上げてほしい」と言い切ります。

これは昨今は需要の振れ幅が大きいということもありますが、要求品質が次第に上がっている中でロットアウトの発生が怖い。

これはメーカー様内の検査で判明したなら即再生産の措置が取られると思いますが、私たちが納入品を使用したところ「何だこれは!」となると本当に大変です。

この面談の最後は若い担当者に向かって
「あなたが弊社の担当者ということは、きっと将来を嘱望されているためだと思います。年月を経てあなたが貴社の幹部やトップになられても生産頻度と在庫量には密接な関係があるのですから多品種少量生産への努力はたゆまず進めてください。」
と言って締めくくりました。

オオ偉そうー、オレは何様じゃ。

 

tyoutatsumeister.hatenablog.com

 

調達の業務課題には様々な対応があり、何が正解ということはありません。

その中で、このブログが対応策の検討やセカンドオピニオンとして少しでもお役に立てれば幸いです。

また、営業職の方々にとっても調達担当者の考え方を理解することで取引先との良好な関係を築くための参考となれば幸いです。