材料手配 短期・中期・長期、それぞれどんな手を打つか
今週・来週とか今月分の材料確保(短期)
例えば、ダンボールメーカーでは、およそ60%が翌日納期と伺って舌を巻いたことがあります。
「製品が違う」という声が聞こえそうですが、どの企業の製造部門でもより短納期で対応できるよう必死で改善を重ねていると思いますが、上には上があるもので、絶対に諦めずに更なる高みを目指してほしいものですね。
しかし実際は、装置産業的色合いが強い大手の歴史あるメーカーなどでは
「この品番の生産頻度は3か月に一度」
とか
「特殊品番のため最低生産Lotの全数引き取りが条件」
などと言われてしまう場合があります。
こうした場合は、窓口商社様などに「内示」による材料確保をした上で日常のデリバリーをお願いすると仕事が非常に楽になりますね。
「内示」とは、例えば6か月以内に全数買取りを確約するもので、その上で日常の納品、例えば来週の納入数量については通常の注文書を発行するやり方です。
この中で取引先様と事前に申し合せた期間内には全数買取りを確約する訳ですから内示書を発行する時は製造部門にしっかり了解を取っておく必要があります。
3か月後から6か月後の材料確保(中期)
大本のメーカーでの生産頻度が低い場合「内示」をして短期的な材料を確保しても、その次の生産で、いつ・どれくらい必要なのかを見極めないと材料がショートして自社のお客様への納期に問題がでてしまいます。
これは自社製品の生産量が安定している時は良いですが、増加してる時は大変ですね。
基本的には多い目に頼むのですが、この「多い目」を更に上回る注文が入ることがあり、こうした時は、とにかく取引先様に訪問してお願いをすることが多くなります。
昔、ある製品で通常月の50倍の注文が突然入りました。
5倍ではなく、50倍です。
製造部門と「これは何かの間違いではないか」と話しながらもお客様からの正式注文ですので、調達としても対象材料の取引先様に内示ではなく、正式注文を出しました。
そして、これは間違いなどではなく、その後も対象材料の通常の手配納期が3~4週間に対して7~10日に一度のペースで最初と同量の追加受注が続きました。
社内では「いったいこれは何だ?」という状態が続きましたが、程なく最終製品が当時話題となり始めていたiPod(iPadではありません)であることが判明し、取引先様と一緒に供給体制を整えて行ったことがありました。
とかく電気製品は、常に商品企画の段階ではヒット商品となることを目指しますが、その結果にはハズレが多いものです。
しかし、当たった場合も大変です。
この段階では、更に別のことも検討を始める必要が出てきます。
1年後から2年後、更に先の材料確保(長期)
自社製品の受注量が更に増加する見通しの場合に
- 対象材料の取引先様の最大生産量で必要量がどこまで賄えるか。
- 同様の機能・特性を持った別メーカーの製品との複数購買化。
といったことを考え始めます。
この時、別メーカーの製品の検討は自社製品のコストダウンの目的だけでなく、お客様に自社製品を安定して提供する側面を良く認識して開発・製造・品質保証の各部門に協力を求めます。
一方、従来メーカーの最大生産量の確認こそ調達部門独自の仕事です。
対象材料の生産ラインのキャパシティーや別のお客様向け製品との兼ね合い、現状の歩留まりや別の生産ラインの活用の可能性など、注意深く情報収集をします。
昔、私の上司は、ある大手メーカー製の基幹材料が近い将来決定的に不足するという確信を持って、事業部長と一緒にその大手メーカーを訪問し「新しく工場を建設して増産してほしい」と要請をしに行ったことがあります。
さすがに、その大手メーカーはそれだけでは工場新設には踏み切りませんでしたが、およそ3年後に新工場が竣工しました。
企業のトップはどちらも常に難しい判断を迫られており、工場の新設はその中でもとても大きな判断だと想像します。
こうした判断は様々な情報を総合した決断だと思いますが、上記のような動きもこの判断を後押しする材料の一つになったのではないかと思っています。
また、対象材料のメーカーが中小の企業である場合は、増設する設備の費用〇億円を自社が負担して増設を図る例もあります。
こうしたことは社内の他の誰かが言い出したことの後について行くのか、私たちが提案して先頭に立って進めて行くのかで調達という仕事の面白味が随分変わってくるでしょう。
このように調達の仕事は目先のコストダウンだけでなく、自社製品に必要な材料の物量をアノ手コノ手で安定的に確保することで自社の業績拡大に大きな寄与ができるのです。