調達魂

~日々奮闘する資材調達・購買バイヤーに贈る言葉~

材料不足、何とかならない~

突発的なトラブルが原因で必要な納期に材料が不足する事態の対応については、以前別の稿で触れました。

tyoutatsumeister.hatenablog.com

それとは別に私たちの会社の製品が使用されている最終製品がヒットして追加注文が相次いだ場合は、いわゆる「嬉しい悲鳴」を上げることになります。

しかし、これは自社と取引先様の生産能力のキャパシティーの範囲の中で収まる注文量の場合の話で、それを超える注文量になってくると話が変わってきます。

製品のヒットによる材料不足

つまり、時間軸で考えるとトラブル起因の場合は一過性ですが、生産能力を超える注文量に対応するには設備や人員を増強する必要がある場合が多く、その実施には半年や1年という時間がかかり、その間は「モノ不足」の状態が続いてしまいます。

こうした設備や人員増強について取引先様にどうのようにアナウンスして行くかは以前も触れましたが、今回は今週とか来週とか、今をどうするかについてです。

tyoutatsumeister.hatenablog.com

自社の製品が、多数のお客様から「ひっぱりだこ」になった時

 液晶用の部材は一時期用途に関係なく需要が大きく伸長して「モノ不足」はいろんなところで発生してましたが、この中で特に強く印象に残っているのは携帯TEL用で発生した「モノ不足」に対応する製造部の会議に出席した時のことです。

この時は、取引先様の材料の生産能力には問題がなく、私たちの会社の生産能力が需要に対して不足している状況でした。

製造部門では当然「一つでも多く」という精一杯の体制を取った上で、それでも注文量に対して大幅に不足する完成品をお客様別にどう配分するかを決める会議でした。

この時の製造部長の判断を私なりに理解した内容は

  1. 競合メーカーと複数購買しているお客様よりも私たちの会社の製品を100%採用しているお客様には優先して配分する。
  2. 競合メーカーと複数購買しているお客様の中で、私たちの会社の比率が高かったり、取引をする中での厚意や礼節のあるお客様へは配分を重くする。
  3. 逆に値段だけで簡単に比率をアップダウンしたり、高圧的な態度のお客様に対しては配分はあまり考慮しない。

いかがでしょうか?

当たり前ですが、日頃の取引の有り様がそのまま反映された判断ですね。

困った時ほど日頃の取引の影響が出る

特定の材料が「モノ不足」になった時の対応というのは、日頃の取引の濃淡にかかわらず
まず、調達担当者がお客様を訪問して要望数量の確保をお願いする。
それで獲得できた数量が不十分であれば、更にその内容に応じて自社のそれなりの立場の幹部と同行訪問して協力を要請する、というのがどこでも同じセオリーですね。

取引先様に増量要請で訪問すると、さすがにゼロ回答はなく若干の増量回答というお土産を持たせてくれますが、基本方針は上述した製造部長の判断基準によるものと思います。

つまり、材料不足になった時に日頃の無礼な対応を棚に上げてお願いしても効果はあまりないと思うべきだと考えます。

ですから、何でもかんでも複数購買化をしたり、ちょっとでも安い価格が提示されたから
と言ってA社からB社へ、B社からC社へ、と簡単に発注先を変更することは調達部門の短期的な実績を上げるという近視眼的な行為に見えてしまいます。

最近でこそ良く「戦略的パートナーシップ」という言葉を聞くようになりましたが、自社の製品の市場シェアを本当に拡大したいと思うなら取引先様との信頼関係の構築は細心の注意を持って意図的に行う必要があります。

そして、そうした信頼関係というのは1年や2年という短い時間で簡単に築けるものではないのです。

 

調達の業務課題には様々な対応があり、何が正解ということはありません。

その中で、このブログが対応策の検討やセカンドオピニオンとして少しでもお役に立てれば幸いです。

また、営業職の方々にとっても調達担当者の考え方を理解することで取引先との良好な関係を築くための参考となれば幸いです。