リーマンショックと過剰在庫
業態や会社によって「適正在庫量」は様々で、カンバン方式での場合の在庫は本日の生産分+αくらいかもしれませんね。
しかし、そんな場合でもそうした体制を支えるために部品メーカーや材料メーカーは不測の事態に備えて在庫を抱えており、これがサプライチェーンと呼ばれます。
自動車メーカーでは予め立てた生産計画が粛々と実行されようですが、それ以外の一般のモノ作りの会社では製品が最終製品に近ければ近いほど、より売れ筋の商品を市場に供給するために計画がコロコロ変更されます。
その結果、足元の需要量に対して注文が上振れする場合に備えて、在庫はかなり多い目に準備しています。
私たちの会社では、手配納期が1カ月の材料であれば、注文の増加リスクに備えて在庫は2カ月分持つことを目安にしています。
つまり、前月の私たちの会社からの発注実績量を踏まえてメーカー様には当月の生産量を決定してもらいますが、常に2か月分の在庫は確保している状態です。
そして、この状態は「適正」とは呼ばずに「標準在庫量」呼びます。
つまり、その時々の需要のトレンドに応じて、この標準量に対して「多い目」「少な目」という調整をして適正な在庫量に調整します。
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2008年の 「リーマンショック」の時には
「需要が蒸発した」と言われ、世界中でモノが動かなくなってしまいました。
それでも、製造部門の稼働率はゼロか、というとそんなことはなく、液晶の関連であれば車載用途のカーナビ用の製品は動いていました。
これは、自動車メーカーの生産計画には急な変更がないため、日頃から在庫を積み上げていなかったことで、自動車の生産が止まらない限り注文が継続したと考えています。
その他、食料品など日常の生活をする上で必需品は動いていたと思いますが、それ以外は世界中で様子を見るため買い控えが起こっていたようです。
私たちの会社でも多くの製品が動かなくなってしまいました。
この時、私たちの会社の営業部門がお客様に売りに走ったのと同様に取引先様の営業担当者からも私たちに対して、何とか在庫を少しでも買い取ってもらえないか、という要望を受けました。
この時は取引先の営業担当者様からは
「直近3カ月のご注文量をベースとすると現在弊社の在庫量は2年~3年分になってしまい、会社から過剰在庫なので何とかしろ、と言われてまして。」
という話でした。
つい数か月前まで実績平均発注量2カ月分を適正在庫量として両社で運用していた同じボリュームの在庫が、発注実績が減って分母が少なくなっただけで評価が数年分の在庫となった訳です。
考え方の背景も理由も十分わかります。
しかし、何と変な話でしょう。内心は吹き出してしまいました。
この時、申し入れをされた取引先の営業担当者様には
「今は例えば、冬山登山をしていて道に迷い、さまよっているうちに夜になってしまったような状況だと思います。暗い中で引き続き道を探すより、今はジタバタせずにこの場所でビバークして夜明けを待ち、少なくとも周辺の景色が見えるようになるまで体力を温存しましょうよ。」
と諭した上で
「多分、この先どうなるか世界中の誰にもわからない。しかし、わからない、で思考停止するのではなく、これからどうなるか自分で仮説をたてましょう。そして、世界の経済がまた動き始めた時に、その仮説がアタリかハズレかを考えましょう。だって、その方が絶対楽しいでしょう?」
と話をしました。おお、偉そう~
「来月も製品の生産量は同じ」であることはない
日常業務をしていると、材料の必要量は先月も今月もそして来月も同じ量で考えてしまいがちです。
しかし、私たちの会社はずっと停滞して変わらないのでしょうか?
そんなことはありませんよね。
にもかかわらず、翌期の予算を策定する時、特に間接材料などは今期と同じ使用量を前提にしていませんか?
翌期は人員が減るのでしょうか?増えるのでしょうか?その背景は何でしょうか?
その上で、使用材料の量はその増減に対し単純な比例計算で良いのでしょうか?
私は、社内の変化を反映する、というより私たちがもっと主体になって変化を引き起こす動きをしたいと考え、いつもその切り口を虎視眈々と狙っています。